すずの好きなもの  

 

 


 

めくじに乗って、すずは、いつもやってくる。 片手には、大きな蓮の葉っぱを持ち、腰にはふた付きかごをぶらさげている。 すずの目は、猫の目のように、真っ暗闇でもよく見えるのだ。   大好物はチョコレート、それもスイスのトブラローネミルクチョコレート。 これをもらったら、えんま大王様の言いつけだって、簡単に破ってしまうのだ。
 

ずは、今とっても真剣な顔で、なめくじに乗っている。 そう、死んだ動物を探しているのだ。  なめくじの背中をポンポンと叩くと、止まり、大きな蓮の葉で仰ぐと、やわらかい風と、甘酸っぱい花の匂いがするのだ。 その匂いに誘われるかように、死んだ動物達のたましいが、すずの所にやってくるのだ。 そして腰のふたを開けると、スーッとその中にたましいが入ってくる。 すぐにふたをして、たましいのおっぽを切り離す。 すると、かごの中でたましいが、悲しいのか”りーん・・・りーん・・・・”と、とっても澄んできれいな音を響かす。 

る時、その音を聞きつけて、九尾の狐がやってきて、”俺にたましいをくれろ。 くれねーと、おまえを食っちまうぞ!” すずはものすっごーく怒って、 ”こら、九尾の狐、もう一度言ってみな、この私を食うだと、よーし” と言うが早いか、 ”ジャンジャラ、ジャンジャラ、ピー”と、呪文を唱えて、かごのふたを開けたとたんに、九尾の狐は、その中に吸い込まれそうになったが、九尾の狐も負けていない。 九本の尻尾を激しく打ち振るうと、たちまち体が何倍も、おーおきくなり、後ろ足でかごのふたをすると、すずに飛びかかって、あわやというときに、すずは九尾の狐の大好物、油揚げを投げつけた。油揚げの匂いをかいだとたんに、九尾の狐は、体から力が抜けて、かごに吸い込まれてしまった。 それからと言うものの、九尾の狐はすずの家来になり、いそいで出掛けるときは、かならず九尾の狐に乗って出掛けたそうな・・・・。 

、ある夜の事だった。すずが九尾の狐を枕にして、うとうとと寝ていたら、どこかで小さな女の子の泣く声がしてきた。 そこで九尾の狐は、そーっと抜け出すと、女の子の所に行き、”泣きたかったら、もっととーくのほうで泣きな、さっさといかねーと、この俺がおめーを食っちまうぞ!!”と言いながら、真っ赤なべろによだれまで出して見せたときだ。 ”うるさいねー、しずかにしないか、まったくもー” すずの声に、”へぇーすいやせん”と言ってふりむいたとたん、九尾の狐は、目を回し、口からは泡を吹いて、四本の足は、夜空に向かってピクピクとけいれんを起こしていた。   

たわらには、棒切れを持った女の子が、立っていた。 ”ふーん あんたやるねー、オチビさんの割にさ! ところで、何のようだい。ここは、普通の人間の来るところじゃないから、よっぽどのことだろ。” ”はい、すずさんに、たのみがあって、やってきました。 どーか、あたしのチュウ吉を助けてください。あたしにできることは、なんでもしますから、お願いします。”
 

”チュウ吉を助ける? かごの中からかい?  たましいのおっぽを切られて、かごの中に入ったら、えんま大王様しか、取り出せないんだ。 それ以外ならなんとかなるかも知れないが・・・。”  ”まだ、死んで二日目です。大きな猫にやられたんです。 あたしの命の恩人です。”そして大粒の涙を ぽろぽろ ぽろぽろと流した。  ”そんなでっかい涙を、地獄の鬼が見たら、さぞ喜ぶだろうにな、あいつらは、地獄に落ちて来た、人間の涙を集めて、酒を造るんだよ。 お前の名前はなんて言うんだい?”  ”あたしは、ゆうき。”

、う、きねー、いい名前だね、気に入ったよ。 よーし力になってやるけど、あたしの大好物を持ってきただろうね?”  ”はい!あたしの貯金全部おろして、買って来ました。 ”そう言って、背中のザックを下ろした。 中には、スイスのトラブローネチョコレートで、ギッシリいっぱいだった。 ”これ全部すずがもらっていいのか?”  ”足らないの?” ”いや、そうじゃない こ、こ、こんなにもらっていいのか・・・? ゆうきあんた幾つなの?”  ”あたしは、6才よ”  ”ふーん6才か、よーし、・・・ちょっと慎重にやるからね。” 


 そう言って、すずは、目をつぶった。 5分、10分、・・・30分過ぎた時だった。 ぱーんぱーんと、手を叩いて、なめくじを呼び寄せた。 一番近くにいるのが、ピカピカとほたるのように光り、なめくじの角が、死んだ動物を見分ける力がある上に、乗り心地がとてもいい。

ずとゆうきは、なめくじに乗って、チョウ吉を探しにでかけた。 しばらくススキ野原を進んで行くと、なめくじの角が、急に真っ赤に光った。 ”どうやら、ここにいるよ。だいぶ弱っているね、ゆうき!ついてきな。”
あたりは真っ暗だけど、すずに手を引いてもらって、ゆうきは、必死でススキ野原を進んだ。    ”ここにいたよ。” すずは、鏡を取り出し、チョウ吉になめくじの真っ赤な光を反射させた。すると、チュウ吉が、真っ赤になり、少し宙に浮かぶと、”ゆうき、しっかり抱いてあげな!” すずが言ったとおりに、しっかりとチュウ吉のたましいを抱いた。  やがて、たましいは黄色になると、”もお、いいよ、離して大丈夫だ。” 手を離すと、たましいは、すーっと高く飛んでいってしまった。 ”自分の体に、戻っていったんだよ。 傷も治っているから心配いらないよ。” 

”おーい、九尾の狐、出ておいで、もお済んだから、これからゆうきを、元の世界に連れて行っておくれ。 さー機嫌なおしてさ、お前にもトラブローネチョコあげるからさね。”  九尾の狐は、ゆうきを乗せて、走り出し、”トラブローネチョコって、本当にうまいのか?”  ”おいしーよ、一度食べたら忘れられないよ、ポッケにひとかけらあるから、食べてみる?” 走りながら、ゆうきはぽいっと入れてあげた。たちまち、九尾の狐の目は、とろーんとして、 ”うめーなー、早く帰って、すず様にもらわねば。 それにしても、お前は、よっぽどチュウ吉のこと好きなんだな、チュウ吉がうらやましいな。 

 
 さっ着いたぞ、ここでお別れだ、元気でな” ”さようなら、頭を棒で叩いてごめんね。大丈夫かな・・・ありがとう。” 九尾の狐は、もう頭の痛みもなんのその、九本の尻尾をおもいっきり振って、帰っていった。 途中で、トラブローネチョコのことを思い出すと、目はトローンとし、口の周りはは、よだれでいっぱいだった。

ころが、一方のすずは、えんま大王様に捕まり、さんざんだった。 ”おい、すず、係りの黒鬼が、チュウ吉というねずみが、そろそろ来る頃なんですが、まだ来ていません。何かの手違いでしょうか?と言ってきたが、なにやらしでかしたな!   くんくん アー くんくん 何か甘い匂いがするぞ。 オイ出せ、出してみろ。 やっやーこらなんじゃ トンブラコチョコだと。”  ”違います、トラブローネチョコです!”  ”それにしても、こんなにいっぱいどうしたんだ、えー?ちょっとくれてみろ。” ぽいっと口に入れたら最後、もうやめられないほどうまかった。  ”これなー、もらっていくぞ。いいだろ。”  と言い残して、すたこら行ってしまった。 そんなこととは知らずに、九尾の狐は、超、超スピードで、戻ってきたが、話を聞いた途端、あまりのショックで、頭にはげができてしまった。 


 えんま大王様は、チョコの食べ過ぎで、虫歯菌に気に入られ、この間大悪党の親分に ”お前は、か、ま、ゆ、で、の刑だー・”と言った途端、前歯がぼてっと落ちたり、いまじゃ、そりゃーもー地獄の痛みだとさ、 おしまい・・・。