めがねをかけた やまんば盗耶(とうじゃ)

 

 

 

ーみなさん!!かなり寒いけど元気にしてますか?
久しぶりに、昔話を書きたくなりました。歩絵夢に泊まったことがある子供たちに、プレゼントしますので、どうかいやがらずに、読んでくださいね。
 

ヶ岳を境にして、今の清里側の森を、大コウモリのクツクツが住み、蓼科側の森を、オオコノハズクの盗耶が住んでいました。 それぞれの森が、今よりずーっと深くて、大きかったころの話です。 やまんばとは、森を守る者、という意味です。 さーて、物語を始めましょう。

の森の主は、やまんばの盗耶、そして盗耶の片うでに、黒猫の秋平がいる。 朝日がこの森にしみわたる頃に、盗耶は木の葉にくるまれて、深い眠りにつく。 深くて大きい森に射し込む朝日は、森に何千年と住みついてる火の鳥が、太陽から光のつぶをもらい、森の入り口に置く事で、すみずみに朝日が行き渡り、一日が始まる。


 そして、大木のウロで寝ている、秋平の顔に青みがかった朝日は、気持ちよい目覚めを運んできた。 大きな伸びにあくび、それからヒゲと体の手入れを済ませ、秋平は毎日森の見回りに、出掛けてゆく。

る朝、頭をアッチコッチにぶつけながら、あわてたキツツキがやって来て言った。「西の森にある、池のそばで、怪我をしている人間が倒れているわ!早く見に行って。」 秋平が、いそいで行って見ると、、人間の男が、大怪我をしていた。 「オイッ、お前は人間だな、なんでここにいるんだ。」 男はゆっくりと顔を秋平に向けると、かすかに言った。 「私は、旅の音楽家で、道を間違えて、森に迷い込み、高い岩に登った途端に足を滑らせて、やっと池までたどり着いたが・・・、私はもうだめです。 どうか子猫のジュリエッタだけでも、助けてください。」


 その日の夜、秋平はジュリエッタを盗耶に会わせて、旅人が森に迷い込んで、死んでしまったことを話した。 そして「私が責任を持ちますので、この子猫を預けさせて下さい。」と頼んだ。 すると、盗耶が、顔を前に突き出し、メガネをはずすと、目から強い光を発した。 その光は、秋平のブルーのひとみが、金色に染まるほど強く、見る間にジュリエッタのひとみも金色に、白目はうすい緑色へと変わった。 盗耶は、「秋平よ、この子と2年したら結婚し、子供を2人生みなさい。最初は男の子で、ワシと一緒に、この森を取ろうとした者どもと戦い、2人とも死ぬことになる・・。次は女の子で、この森を守り、跡継ぎを生む。それでよいか、秋平?」 秋平は、まだ何もわからない子猫のジュリエッタを見ながら、深く頭を下げて、お礼を述べた。

して、2年が過ぎ、ブルーのひとみに、うすい緑色の目の黒猫が、生まれた。 名前は君平、母猫になったジュリエッタの可愛がりようは、大変なもので、秋平が手出しをする隙がなかった。君平が生まれて、半年も過ぎた頃に、一家はそろって、盗耶の前に座り、話を聞いた。 「よく来たな、ジュリエッタ、そして君平よ。この森の掟は、秋平から聞いているな。 この森で生まれたものは、この森で死に、決してよその森には、行かない。 そして、よそ者も入れないのがきまりじゃが、時には許すときもある。 森に生ける者のすべての命は、私によって決められている。     


 さて、今日より君平に、強い光の輪を与えよう。」 盗耶が、メガネをはずした途端、金色の光のうずに包まれた。 「さー君平、今日から戦いに必要なことを、父に1年で教わりなさい。今までのように、ジュリエッタに甘えることは、できないよ。 来年またここにおいで、待ってるよ。」 次の朝、君平が目覚めると、あのやさしい母はいなかった。 そして、秋平は君平を連れて、森の東へと出掛けた。 そこは、蓼科山が目の前にそそり立ち、かなり雪が積もっていた。大きな岩がゴロゴロしている中で、10人の鬼たちが雪合戦をして、遊んでいた。 鬼たちは秋平に気がつくと、いっせいに、雪の大玉を投げつけてきたが、不思議なことに雪玉は、秋平の目の前で、階段に変わっていき、上が見えないほどの高さになっていった。 秋平は、君平を連れて、登り始めた。   


「これから、毎日この高い階段を使って、鬼たちと遊びなさい。階段からはずれてはいけないよ。」 それを下で聞いていた鬼たちは、歓声を上げてよろこび、そしてすぐに君平を捕まえに上がって来た。下の段まで投げ飛ばされ、また階段を登る。時には、雪玉が飛んできて、一番下まで落とされ、やっとの思いで階段を登ろうとすれば、また追いかけられた。 必死で頑張る君平を、遠くの岩陰からジュリエッタは、見守っていた。半年もすると、君平はたくましくなり、鬼たちを次々とかわして、もう捕まることもなく、体も大きくなり、力強くなった。

 そんなある日、秋平が、「いよいよ今日は、火の鳥から、勇者にしてもらうため、西の森に出掛けるぞ。」 2人は西の森に着くと、池の前で立ち止まり、 ジュリエッタが、まだ子猫でこの池で出会ったときの様子を話した。 君平は、黙って聞いていたが、急に母に会いたいと強く思った。  次の日、2人は夜明け前に森の入り口で、火の鳥が来るのを待った。 しばらくすると、それは翼の音とともにやって来た。 秋平は、近づき、クチバシを少し開けてもらい、手を差し入れて、光りのしずくをすくい取り、君平の頭にたらした。 火の鳥が、光のつぶを、入り口の置いて飛び立つと、朝もやの中に静かな陽の光りが、君平を照らし、森の勇者の誕生を告げた。            


 「さー、ここでは、盗耶様から授かった、光の輪の使い方を教えるので、よーく見ていなさい。手の動き、身体の構えをまずはおぼえ、次に背中の1本づつの毛にまで気を配る。 ゆっくりと、しかしすばやく!」 秋平が、言い終わると、秋平の顔の前には、真っ赤な大きな光の輪ができた。「この光の輪が、自分を守り、攻撃もできる盗耶の輪だよ。一番大切なのが、心だ。心の動きで、変化するから、注意するように。」 2ヶ月もすると、秋平がビックリするほどに、君平は盗耶の輪を自由にあやつった。


 得意なのが、手の指に輪を5個作って飛ばし、岩を吹き飛ばす事だ。 あと1週間で、1年になる朝だった。 君平が目を覚まして、池で水を飲んでいると、なんだかとってもなつかしいにおいがして、顔を上げるとジュリエッタがいた。 そして、笛を吹きはじめた。 急いでかけよろうとする君平を、秋平は止めた。 「だまってここで聴きなさい・・・。お母さんは、毎日お前が心配で、見守っていたんだよ。 あの笛はむかし、お母さんといた、人間が持っていた物だよ。」 君平は、声を出さないように、ふるえて泣いた。 もう2度と母に会えないかもしれない。 母が、自分をどれほど愛してくれているか、笛の音色でわかり、心が満たされていくのを感じて、幸せに思えた。 しばらくすると、ジュリエッタが、君平のそばに来て、体をなめてくれた。 そして、「君平、ありがとう。」そう言って離れて行った。 「僕こそ、お母さんありがとう・・・。」  

ても緊張している自分がおかしくて、「くくくっ」と笑ってしまった。 あわてて、盗耶に謝ると、盗耶も、「くくくっ」と笑って返してくれたので、3人は、大いに笑ってしまった。 「さすが、秋平の子だね、よくがんばり、りっぱになったね 。 ところで、君平のよき友になる者を紹介するよ。 コウタロと言ってね、ニワトリだが、良心と知恵を、お前に与えてくれるはずだよ。」  4日程寝起きを共にすると、君平とコウタロは、キョウダイのように仲良くなった。 そんなある日、キツツキが、秋平からの知らせを持ってきた。 それは、南の森の動物たちが、全員いないので、しらべてほしいと言うものだった。 その話を聞き終らないうちに、コウタロは君平より先に、森に向かった。 「なんで先に1人で行くのさ?」 「私の友達のミントが、その森にいるからよ!」


 南の森は、クモの糸がからみつき、いやなにおいに満ちていた。 さらに奥へ進み、一番太いクモの糸をいきおいよく引っぱると、ザガザガ音をさせた、とても大きくて、真っ赤なジョロウグモが、現れた。 そして、先にいるコウタロをみつけ、「ほーうまそうな、ニワトリじゃないか、ソーレ!」と、太くて、ネバネバした糸をコウタロに巻きつけた。 それから、「仕上げのオイルさ!」と、口からとってもくさいオイルをかけたので、コウタロは、クワーッと鳴いて気絶した。 すかさずジョロウグモは、とびかかり、一飲みしてこう言った。「ワーォ、この口ざわりが、たまらない、最高だね。」 その様子を見た君平が「よーくかまないのは、身体に悪いんだよ、それにオレの親友を食っちまう奴は、こうだー!」 相手が振り向くと同時に、君平は光の輪を5M先の岩に投げつけ、はねかえりがジョロウグモの腹に命中した。 腹から羽をばたつかせてコウタロが出てきた

の輪が当たった大岩は、宙にに浮かび、下はほらあなになっていて、中からオオトカゲと森中の動物たちが、いっぺんに出てきた。 オオトカゲは、迷わず君平めがけて突進してきた。    君平は慌てずに光の輪を風船のようにふくらませて、オオトカゲに投げつけると、その光の輪に吸い込まれてしまった。 やっと、毛づくろいが終わったコウタロは、「イッチョウライの羽が台無しよ!もっと早く助けられないの?まぁ、森の動物たちがみんな元気で見つかってよかったわ。でも、どうして、あの大岩の下とわかったの?」 「それは、ジョロウグモが、君を食べ終わると、すぐに大岩を守る、しぐさをしたからさ。 それにしても、このオオトカゲさ、君を見て、ヨダレを出しているぜ、どうする?」


 コウタロは、ふうせんの中でじっと自分を見ているオオトカゲに、「あなた!カガミを見たことないでしょ、かなり不恰好よ。 ジョロウグモと、あなたはどこの森から来たの?」オオトカゲが、ニヤニヤしながら、「そのうちわかるさ、すごい方が来られるからな。 やがてこの森は、われわれのものになる。 お前たちは、じゃまだから、殺せと言われている。」君平が、指を鳴らすと、ふうせんの中の空気が出て、すごい勢いで、遠くへ飛んでいった。コウタロが、大声で、ねずみのミントの名前を呼んだが、返事がない。君平も一緒に探したが、見つからなかった。

して、その日はやって来た。 2人は人間の歌声で、目が覚めた。あたりはまだ薄暗いので、コウタロは、メガネをかけないと、何も見えない。 いそいで、歌声の聞こえてくるほうへ、向かい、声を掛けた。 「ねー娘さん、歌うのをやめて、この森から出て行ってくれない? 森の主の盗耶様は、人間がきらいなのよ、見つかったら、2度と森から出れないわ。」 「はーん、お前が、コウタロだね。 相棒の君平とやらは、どうしたのさ。」 「オレなら、ここにいる、お前は誰なんだ。」「あたしかい、八ヶ岳の反対がわの森の主で、クツクツと言う者さ。 昔は盗耶と仲がいい時もあったがね。 今日は、この森が欲しくて、いただきにきたのさ。 おとなしくあたしの家来にならない?」    「それは、無理よ、あなたは確か・・・本当の姿はコオモリで、何にでも変身できたり、イカズチと言う武器を使うと聞いているわ。」


 クツクツは、パチパチと手を叩いて、「さすが、コウタロ、頭の回転がいいね、ねずみのミントとお前は仲良しだろ、でもあたしの手の者だと知っていたかい?それなのに、バカな大グモのヤツが、ミントを食べてしまった。 お前たちのことは、すべて知っているよ。 なんと言っても、盗耶があたしと戦う準備をしたと聞いて、今日の日が来るのを楽しみに待っていたんだよ。」 コウタロは、クツクツをにらみながら、「自分の仲間も食べるなんて、最低ね。」と言い、「どうして、自分の住む森があるのに、ほかの森まで欲しがるのさ?」と、君平が、聞いた。


 「フン、あれは、4年前のことさ、人間どもがあたしの森を勝手に森を切り開き、森の半分がなくなった。 あたしは怒り狂って人間と戦い、はじめは簡単にやっつけたが、そのうち人間どもは、イカズチを吸い込む機械と、木や土を削り取る機械を持って、大勢でやって来た。あたしの力では、もう防ぐことはできなくなり、ついに人間どもと取引をした。 それは、盗耶の森をいただいて、山分けすることだった。」 「そんな、身勝手を神様が許しても、僕は絶対に許さないよ。」 「そうこなくっちゃ、おもしろくないよ。さーあ、かかっておいで、どれだけ強くなったかね。」

ウタロが、叫んだ。「君平、光の輪で、私たちを囲って、まず守りからよ。」 君平もそう思っていたので、2人の回りに光の輪を作った。 クツクツのイカズチ攻撃は、すごい勢いで、光の輪をけずりはじめた。 君平は、まず指の上に、光の輪を5個作り、次々とクツクツめがけて投げつけた。 クツクツが、ひるんだすきに、今までにない力強い光の輪で、ふうせんを作り、投げつけて、閉じ込めることに成功した・・・と思った次の瞬間、クツクツの顔は、盗耶に変身した。


 君平があわてて光の輪の力をゆるめたすきに、、イカズチが2本飛んできて、君平は右腕を、コウタロは、胸を貫かれてしまった。 「君平、あたしは、もうだめだけど、尾羽を抜いて、怪我をしたその右手に持って。 あたしの最後の力を、あなたに託す・・・。」そう言って目を深く閉じた。 尾羽を右手に持った君平のひとみは、大切な友をなくした、悲しみと怒りが爆発していた。 その様子を察したクツクツは、イカズチの矢を君平めがけて、まさに投げつけようとした時だ。 クツクツの後ろから大きな光の輪のうずが、クツクツを飲み込んだ。

っと間に合ったね、朝はニガテじゃよ。」そう言いながら、盗耶があらわれた。 「今日こそ決着をつける時だね、クツクツ覚悟しな。」うずの中でもがきながら、コオモリに戻ったクツクツは、赤い目を光らせ、手を広げると、イカズチをツルギにかえて、うずの中からとび出てきた。 大きな羽で、2〜3回羽ばたくと同時に、石を盗耶に投げつけ、すごい速さで襲いかかると、のどにツルギを突き刺した。 すばやく盗耶もメガネをはずして、目から光の光線を出していた。クツクツは避け切れずに、羽を失った。

 君平は、その素早さについて行けず、立ちすくんだ。 クツクツは、強すぎる、急いで光の輪を、いくつも投げたが、相手にならない。 もう君平ののどの先にも、ツルギが突き立てられ、目を閉じようとしたときだ。 「君平!目を閉じるな、相手の両手をつかめ!」秋平の声が声がした。 素早くクツクツの両手をつかんだ。 しかし、同時にツルギは、君平ののどを貫いた。 それでも君平は両手を離さなかった。 秋平はすかさず、光りの輪の力で、ロープを作ってクツクツに投げつけると、ロープはクツクツに巻きつき、すさまじい勢いで締め上げた。 とどめに、光の輪で弓を作り、盗耶の羽で射抜いた。 すると、クツクツは、見る間に溶けていった。 秋平は、火の鳥からもらった、光のしずくを盗耶と、君平と、コウタロにかけて癒すと、そこに火の鳥が、やってきて彼らを神様のもとへと連れて行った。 

のあとには、ふかい悲しみが森をつつみ、火の鳥は来なくなり、黒い霧がたちこめ森を覆ってしまった。 何年続いただろうか、神様は見かねてジュリエッタに、「この森が死んでしまうよ、盗耶と、君平とコウタロの死をムダにしてはいけないよ。 盗耶に言われたことを思い出しなさい。 秋平と2人で、森をそだてるのですよ。」 ある日子犬が、森の入り口にそっと置かれていた。 


 その子犬をすっかり気に入ったジュリエッタは、一緒に暮らすようになり、まもなく女の子を生んだ。 秋平は、生まれた子と子犬の名前をつけた。 「私たちの子は、嬉々(キキ)そして、子犬は恋恋(ココ)と言う名前にしたよ。」 2人は仲良く、いつも一緒。 そんな2人を見て、とても幸せを感じた。 そのよろこびが、森じゅうを明るくし、ジュリエッタと嬉々(キキ)と、恋恋(ココ)の笑い声が森のすみずみまでひびきわたり、動物たちや、木々をそだて、森が以前にまして大きくなっていった。秋平は、森のすべての入り口に、盗耶のしるしのコノハズクのカンバンを作って掲げた。   

うでしたか? 君平とコウタロは、ペンションにいたネコとニワトリです。2匹が我が家からいなくなった今でも、私たち家族の心に生きています。 うれしいとニコニコします。そんな気持ちが、浮かんできたので、こんなお話を作ってみました。 そして現在は、ミニチュアダックスのココ、トラ猫のキキを飼い始めました。


この2匹はかなりヤンチャですが、散歩も寝るのもいつも一緒で、とても仲良くしています。 このお話の続きを書けるようにがんばり、また皆さんに送れるといいなーと思っています。 それじゃ、皆さんお元気で、夢一杯の子供でいてくださいね。   千夜彦一より。